佐々木譲「警官の血」(上)「下」

親子三代にわたる警官を描く大河小説。エピソードとエピソードの間、数年ポンと飛ぶ、そのリズムに最初は面食らったが、丁寧な描写でどんどんストーリーが進み、読んでいて気持ちが良い。初代の死の真相、三代目の結末具合には少し不満があるが、三代目を主人公にして更に展開があるのかもしれない(ないかもしれない)とか思う。

一番来たのが二代目の話。自分の母校(北大)が舞台になるということばかりではなく、潜入捜査のストレスでPTSDにかかり、そこから立ち直っていこうとする様が良い。主人公の症状として医師が「感情の鈍麻、ものごとに対する関心の減退、幸福感の喪失」と伝えるところは、ちょっとドキッとした。おいおい、最近自分でこんな傾向はないか?いやいや、怒りっぽくなっている面もあるから、そっちの方向には進んでいないだろう。(と思うのだが。)