デジカメ買って写真撮ったりするようになって、図書館に本を借りに行っても、写真関係の書棚の前で立ち止まることが多くなった。

たいがい、デジカメの撮り方みたいなハウツーものを借りたりして、斜め読みして、ふーん、なるほどね、で終わりだが、こういう小説もこの分類なんだ、と思って借りて読んだ。

長野から東京に出てきて、写真学校に通う「僕」を主人公にした自伝的青春小説だ。途中、劣等感や不安、投げやりな気分にかられ、学校にいかない日が増える、という話がある。ああ、そうだ、自分もしばらく大学にいかないことがあった。出来のいい連中に囲まれて、自分が何をしていいのか分からなくなって(というより他にやりたいことがあったけど踏ん切りがつかず)、うろうろしていた時期だ。

結局のところ、せっかく入った大学なんだから、卒業しないともったいないだろう、情報処理の時間に習ったプログラミング方面だったら少しできるかもしれないし、と思って大学だけは卒業しようと思った。大学辞めて他の世界に飛び込む勇気も金もなかった。そんな打算的な考えで大学に戻ったが、卒論でお世話になった研究室で、いろんな人に出会えて、おかげで今の生活がある。というようなことを考えながら読んでいたら、止まらなくなって久々に夜更かしして読んでしまったのだった。

この本の主人公には、一貫して「写真」がある。最初はへたくそだが、徐々に写真を撮ることに自分の言葉や思いを重ねていけるようになっていくところが、青春小説だなあ、と感じた。