それぞれ暗い過去を持つ、二人の女性を主人公にした連作シリーズの第1作だそうで、上野のブックエキスプレスで平積みになってたのを買って読んだ。うまい小説家だと思う。四作目の「すてる神あれば」で、芭子(はこ)が家族にさよならを言うあたりから、彼女が綾香の職場の様子を見に行くあたりは、なんだかウルッと来てしまった。

別シリーズ(といっても2冊だけかな)でおなじみの高木聖大巡査も登場し、文庫本の帯にもガンガン出てくる。こっちも、ああ、あいつが出てくる下町ものか、と思って買うわけで、売り方もうまいということになるかな。

舞台は谷中。一作目で、登場人物の大石老人があたりを散策する人に対して、覗き見趣味だと憤慨するシーンがある。自分も谷中のあたりは時々うろうろするが、なかなかうまい具合に写真が撮れない。自分にとっては、いい風情の散歩コースだけど、そこに住んでる人には生活の場なわけで、雰囲気いいからといってパチパチ写真撮ってるのってどうよ、と思う気持ちがなくはなかったから、ということかも。

読んでて、あの辺だなと分かる部分もあって、なんだかうれしく思ったし、この本の舞台を巡るつもりで、おとなしく歩いてみる分にはバチは当たらないだろう、と勝手に解釈しているが。